ここから本文です。
現在、地域おこし協力隊が活動している、高柳町荻ノ島集落をご紹介します。
(平成31(2019)年4月20日活動開始)
荻ノ島(おぎのしま)は小高い丘の上にあり、とても静かでじょんのびとした60人未満の小さな集落です。
※じょんのび:荻ノ島のある高柳の方言で「寿命延び」=「寿命が延びるほどゆったり・のんびりする」という意味です。
かやぶき民家が田を囲む環状集落が特徴の荻ノ島では、平成に入る前から都市農村交流などの地域づくりの取り組みをスタートさせました。平成6年には「荻ノ島かやぶきの宿」の営業を開始し、その結果多くのメディアや視察が訪れ、観光バスが行き交う場所となりました。
しかし、高齢化が進む荻ノ島にとっては、これまでと同様に不特定多数の人たちを受け入れて交流する観光を続けても、集落の存続にはつながらないと考え、平成25年に地域づくりの方向性を大きく転換しました。
「共に支え合う共生・協働」を掲げ、除雪や草刈り、共同作業など、荻ノ島に暮らす人たちが安心して暮らし続けられるための新しい仕組みづくりに取り組むとともに、荻ノ島の暮らしに“共感”する人たちと深く交流し、荻ノ島の一員として一緒に活動する協働の地域づくりを実践しています。
例えば横浜の社会福祉法人と「共に支え合う連携協定」を結び、集落で作る米の約半数の取引をしてもらったり、お互いのイベントに参加し合ったりするなど、さまざまなかたちで“深い交流”が行われています。
また、農村インターンシップなどを通じて、大学生や20代の人たちの受け入れなども積極的に行い、ここ数年で荻ノ島の暮らしや活動・考え方に共感する若者5名が移住しました。彼らはそれぞれの得意分野を生かして、荻ノ島に住み続けるための「仕事づくり」にチャレンジし、「農業プラスα」のライフスタイルを実践しています。
荻ノ島集落は中山間地に位置するため大きな農地はありません。しかし、代々と引き継がれてきた農業(主に米作り)を主ななりわいとして暮らしている集落です。
今の農業市場を見ると、多様なブランド化を進め差別化を図ることで、高価に取引できるお米を作ろうとする流れがあります。しかし、荻ノ島のようなヒトもカネもチエも限られている小さな集落では、その競争原理の中で生き残ることはできません。
そのため荻ノ島では、共感・協働しお互いの幸せを支えられるように、横浜の社会福祉法人「ル・プリ」と提携して、競争原理にほんろうされない米の販売をしています。その価格は、集落の方が赤字にならず生産を続けていける金額で買い取っていただいています。
ただ一方で、集落で農業をしている方の高齢化が進み、担い手が少なくなっています。そのため、荻ノ島集落の考え方や山の暮らしに共感して、楽しみながら集落のお父さん達と一緒に、競争原理にほんろうされない農業を実践(継業)してくださる方を、地域おこし協力隊の制度を活用して募集しようと考えました。
荻ノ島では、集落の暮らしを守り続けるための支え合いの仕組みづくりを進め、一定の形ができてきました。今後は“支え合いの経済づくり”を実現するために、地域おこし協力隊の方と次のような取り組みにチャレンジしたいと考えています。
地域おこし協力隊の方には、荻ノ島集落で行われている“競争原理にほんろうされない農業”を集落の方と一緒になって実践し継業していただきたいと考えています。具体的には米づくりを身につけていただきながら、社会福祉法人への米の販売や交流活動に一緒に取り組んでいただきます。
現在、連携協定を結んでいる社会福祉法人「ル・プリ」とは、米の販売が主な取引ですが、今後はお互いの利点を生かし、きのこや山菜、集落で栽培した野菜などを使った商品の開発などを進めたいと考えています。
このため、地域おこし協力隊の方には、集落と社会福祉法人の懸け橋となり、集落の山資源の活用や新しい商品の開発などを行ってもらいたいと考えています。
地域おこし協力隊の方の要望や特技などを踏まえて、話し合いながら活動内容を柔軟に決めていきたいと考えています。春日俊雄さん(荻ノ島地域協議会⻑)にお聞きしました。
荻ノ島の魅力はそこに住む人であり、暮らしだと考えています。今の荻ノ島の人との関わり方、自然との関わり方、村の人の生き方は人間社会のありようとして望ましい姿に近づいていると感じています。移住をしてきてくれた5人の方も、やはりその面に惹かれているようです。これは地域が今後も生き残っていくためにすごく大事なことで、今後の日本社会全体としてもキーワードになると感じています。
今、巷では6次産業化やブランド化が進められていますが、暮らしを無視してそのような開発を進めてしまっても、小さな集落ではそれで20年、30年と続いていくことは厳しいと感じています。そのため荻ノ島では、市場経済ではなく生きがいを支え合う経済を進めていこうと考えています。
具体的には、荻ノ島は農村なので、農地を守ることが集落の仕事だと考えています。経済活動は農家の方の仕事ですが、農地の維持は農家以外も含めて集落全体で支え合って行っています。そして、作業効率を上げるための農地の集約化もほぼ終わっています。
このように地域社会としての支え合いの仕組みができている集落はなかなかないのではないかと自負しています。
▲「荻ノ島地域協議会」代表の春日俊雄さん
私はこれからの社会において、災害が起こったときにどうしようもなくなる都会よりも、田舎の暮らしの方が未来に向けた可能性と確かさがあると考えています。だからこそ未来に向けてこれだけ語ることができます。
今回の募集は農業の継業ですが、私は仕事の前にまず暮らしがあると思っています。仕事の選択肢として地域おこし協力隊ということではなくて、まず山の中での暮らしが好きで、その暮らしに共感をもって、それが自分の豊かさや幸せに感じられる方に来ていただけたらうれしいです。
地域おこし協力隊の任期は3年ですが、その方が任期後に定住するにしろ定住しないにしろ、荻ノ島の暮らしに共感して、コアなファンになってくださるような、将来も繋がっていける関係性が築けたらありがたいなと考えています。
特によくある質問
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください