令和2(2020)年度の市長随想

このページは、「広報かしわざき」に掲載した記事をもとに作成しています。

蜜の雨(2020年7月号)

「手紙を書いたら叱られる 電話をかけてもいけない」と始まる「ホテル」という歌をバスの中で歌い、女子高校生から喝采(非難)を浴び、翌日、校長から「君ねえ」と指導をいただいたことがある。

文月、7月、手紙、雨の季節である。全くと言っていいほど雪の降らない冬、コロナの春を過ごし、夏となった。

マスクをしないと怒られる、握手をしてもいけない、大部屋で会って、大部屋で別れる、2メートルの恋の幸せ? と歌が変わってしまいそうである。

フェイスガードをつけ「三密」を避け、ソーシャルディスタンス、食事に専念、会話は控えめに。趣も何もない文月である。
シュールレアリスムの世界である。

9月入学の話がにわかに浮上し、あっという間に無くなった。
これに関して、英国オックスフォード大学教授の苅谷剛彦さんは「導入したら何が起こるか」ということを推計したデータを提供した。賛成派、反対派がそれぞれ反応したが「エビデンスを数字で示したのにそれさえも結局、二項対立的な分断構造にのみ込まれてしまった。
議論を白か黒かで理解する傾向は、20年前よりむしろ強まっているようにも感じます」(朝日新聞オピニオン)と苅谷さんは無力感を伝えておられる。

私も感じるところがあり、空いた休日、山、海、川へ出掛けた。
女谷、石黒を通って岡野町まで、鵜川河口から鯖石川河口まで、甲戸、別山後谷、大崎、石地、また越後線沿いに荒浜駅まで歩いた。カヌーで鯨波から番神。

アカシアとミツバチのイラスト

西中通の山中では、柏崎産の蜂蜜を取る養蜂家親子から不審者に間違われた。
事情を話すと蜂の習性やアカシアの林で降る「蜜の雨」を教えていただいた。
花からこぼれる蜜が降るのだという。

人も自然も多様である。
人か自然か、でもない。
密の嵐が吹き荒れる中、蜜の雨も降っている。

声援―エール(2020年6月号)

作曲家古関裕而をモデルにした朝のドラマ「エール」を見ている。
大学応援歌「紺碧の空」、阪神タイガース応援歌「六甲おろし」(ライバル巨人の球団歌「闘魂こめて」も古関)や夏の甲子園「栄冠は君に輝く」は好きな曲で、折々口ずさんできた。

「エル、よおーい(用意)!」
中学3年生の応援団長が、6月の柏刈大会前、私たち1年生を指導したことを思い出す。
その頃、身長150センチメートル程しかなかった私は「Lなんてねえよ、どうせオレはSだよ。なんだよLって?」と思っていた。
40数年が経ち、ようやく「エール」だとわかった。

徒然草の第40段は、美しい娘が多くの男性に求婚されたが、栗ばかりを食べ、米を全く食べない様子に「かかる異様のもの」と親が許さなかった、という話である。

評論家小林秀雄は「これは珍談ではない。徒然なる心がどんなに沢山な事を感じ、どんなに沢山な事を言わずに我慢したか」と書いている。
私は受験の時に出会った、この小林の文章をずうっと理解できずにいた。兼好法師の筆は何を言おうとしていたのか?

数年前、ようやく分かった気がしてきた。
普通に暮らすということがいかに貴く、難しいかということ。
そして、少し違うということが生きていく上でさらに困難だということ。
長年世間を渡ってきた親は身に染みて理解し、だからこそ嫁に出さないという、複雑な、しかし深い愛情表現、エールなのではないか。
体も態度もLLになってしまった私ながらの答えである。

学ランを着た応援団員が両手を広げているイラスト

「美しい「花」がある、「花」の美しさという様なものはない」(小林秀雄)

「幸せだから笑うのではない。笑うから幸せなのだ」(アラン)

今は皆さん、お互い、自分にも他人にも
「エール、よおーい!」

先生からの言葉(2020年5月号)

51年前(自分でも驚くのだが)、私も小学1年生であった。過日、担任をしていただいた恩師からお手紙を頂いた。私のほんの小さな行為を喜んでいただいたのだ。58歳になった今も先生に褒められるのはうれしい。

30年前、勤めていた女子美術大学附属高校を辞め、柏崎に戻る決心を固めた時、喜び、悲しんでくださった上司(その後校長先生)からもいまだにお手紙を頂いている。寛容の精神、という言葉を教えてくださった恩師である。

学生だったころ、俳句の泰斗から「内容はともかく、君、頑張れよ」と激励の言葉を頂いた。無謀にも先生の御説に異論を申し上げた時であった。Aが付けられ、返された一茶のレポートは大切に保管してある。末代までの宝である。

中学陸上部では反乱を起こした。
高校山岳部の部室で寝袋に入ってサボっていたところ見つかり、脇にあったザイルでグルグル巻きにされ、放り出された。しかし、いつも先生方は「おまえなあ!」と仰り、2時間後には赦していただいたように思う。

私は今、市長職を担い、皆さんを励まし、正しく導いているのであろうか。まだまだであろう。これまで頂いてきた先生方の温かな言葉を胸に、また戒めともし、与えられた責任を強い気持ちで果たしていきたい。

新緑のころ、山肌に雪がわずかに残っている写真。

「市長さんですよね、おはようございます。マスク、ありがとうございました。妹が中学校でいただきました」
朝、通勤の途中、声をかけられた。しっかりした女子高校生だった。

さまざまなことが起こる中、街角でお声掛けいただく言葉に人様の情を感じ、教えられている。悪いことばかりではない。初夏、新緑に薫風が吹いている。

卒業式の祝辞に代えて(2020年4月号)

卒業証書の周りに桜の花びらが舞っているイラスト

小学生の皆さん、中学生の皆さん、こんにちは。今回の新型コロナウイルスの問題、大変ですよね。早く学校に行ってお友だちに会いたい、一緒に勉強したい、遊びたい。けれどももう少し待ってください。

さて、小学校6年生、中学校3年生の皆さん卒業おめでとうございます。この原稿が届く頃はきっと入学おめでとうございます、かもしれませんね。今年の卒業式はどこの卒業式にも行けませんでした。申し訳ありません。ここで卒業式でお話ししようとしたことを書きます。

先ほど、皆さんは校長先生から一人一人卒業証書を頂きました。ドキドキしたと思います。お辞儀の仕方大丈夫かな、途中でつまずかないかな。緊張しましたよね。

同じように後ろの方で、ご家族の方もあなたたちを見ていて、ドキドキ、緊張、心配していたと思います。自分のことを心配するだけでなく、子どものこと孫のこと他人のことを心配することができる。これが大人です。あなたたちは小学校を卒業し、中学校を卒業し、少しずつ大人になるのです。人のことを心配できる大人になるのです。思いやりを持つ大人になるのです。

いろいろなことがあります。これからはもっといろいろなことが起こります。私からのお願いです。そのとき、難儀なとき、困ったとき、思い出してください。家族を、友だちを、柏崎の仲間を。将来は柏崎を出ていく人もいるかもしれません。けれどもどこの地にいても柏崎の人を思い出し、柏崎を応援してください。柏崎はいいまちです。素敵なまちです。柏崎も皆さんのことをずうっと応援しています。

おめでとう。皆さんの幸いを心より願っております。

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更新日:2020年07月03日