同じ過ちを繰り返さない ―ハンセン病の歴史から、感染症による人権侵害を考える

新型コロナウイルス感染症が流行拡大したことで、感染者やその家族だけでなく、医療・福祉機関、地域、職場など感染症への治療や対策に携わる関係者や家族への誹謗中傷・差別などの人権侵害が発生し、大きな社会問題となりました。

しかし、こうした感染症による人権侵害は、今回初めて起こったものではないことをご存知ですか?

新たな感染症が発生している今こそ、一人ひとりの人権を尊重して、より良い市民社会を築きあげていくことが大切です。過去の歴史も踏まえて、考えてみましょう。

感染症とともに繰り返されてきた人権侵害 ―ハンセン病

平成8(1996)年まで続いた隔離政策

日本には、過去にハンセン病患者が強制的に隔離され、患者本人やその家族に対するさまざまな差別・人権侵害が行われたという事実があります。

ハンセン病(らい病)はらい菌という細菌によるもので、その感染力は弱く、特効薬が開発され、万一感染しても後遺症もなく治癒することが判った後も、日本政府が隔離政策を改めなかったことが、偏見を助長し、差別・人権侵害を拡大させました。

また、このほかにも、エイズ患者やHIV感染者、肝炎患者などに対し、不確かな知識や誤解による差別や偏見が、今なお存在します。

強いられた堕胎、奪われた子どもの命

写真:「命カエシテ」の文字が中央に刻まれた石碑

胎児慰霊碑「命カエシテ」(国立療養所栗生楽泉園)

右の写真は、群馬県草津町にある国立ハンセン病患者療養施設「国立療養所栗生楽泉園(くりうらくせんえん)」内に建立された胎児慰霊碑「命カエシテ」です。

この慰霊碑が建立された背景には、らい予防法および優生保護法の施行下で、入所中の妊娠患者に対し強制堕胎政策が行われ、多くの小さな命が奪われた悲惨な歴史があります。
新たな命を迎え入れるはずの母であり、父になるはずであった入所患者の皆さんに、法の名の下に、過酷な肉体的・精神的迫害が加えられたのです。

刻まれた「命カエシテ」の言葉から、感染症により人権を侵害された患者の皆さんの悔しさや怒りが伝わってきます。

私たちには、こうした感染症患者の皆さんへの人権侵害の歴史にきちんと目を向け、同じ過ちは二度と繰り返さないという強い覚悟・決意が必要なのではないでしょうか?

無自覚のうちに育つ差別や偏見

心にある不安や恐れ、苛立ちは、その人の行動を支配するだけでなく、不確かな情報にのせられて、ウイルス同様に人から人に伝染し、あっという間に広まります。

その結果、自覚のないままに、社会の中に差別や偏見の芽が生まれます。

それらの芽は、さまざまな場面で繰り返されるうちに、大きく育ってしまいます。

今、私たちにできること ―他者への思いやりと敬意をもった行動を

私たちが、本当に恐れるべきは、ウイルスそのものであり、感染者などの「誰か」ではありません。

今、自分にできることは何かを問いかけ、「誰か(=他者)」に対する言葉や行動として、本当にふさわしいものは何かを冷静に考え、不確かな情報に惑わされることなく、相手のことを思いやる気持ち(=人権尊重の意識)を大切にしていきましょう。

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更新日:2021年11月05日