柏崎刈羽原子力発電所のケーブル火災に対する要請書(2018年11月13日)
柏崎刈羽原子力発電所内でケーブル火災が発生した問題について、市長は、東京電力ホールディングス株式会社に対し、2018年11月13日に要請書を提出しました。
その後、2018年11月16日に東京電力より回答および説明を受けました。
要請書および回答書の内容は以下の通りです。
要請書
提出日
2018年11月13日
宛先
東京電力ホールディングス株式会社
執行役員 柏崎刈羽原子力発電所長 設楽 親 様
提出者
柏崎市長 櫻井 雅浩
要請内容
さる、11月1日に起きた貴社柏崎刈羽原子力発電所内のケーブル火災について、新聞各紙の報道でも明らかなように、今回のケーブル火災について私は詳しい説明を求めている。もちろん、正式に説明せよ、と今まで要請はしていないが、私の考え、つまり説明を求めたいというところは公のものとなっている。本来、東京電力自らが私の懸念を知り得た段階で自発的に説明に来るべきであるが未だ説明への動きは無い。
下記事項について、改めて回答を求め、説明を要請する。
1.原因究明
- 今回の事象を引き起こした原因は何か
- なぜ、原因特定が遅れているのか
2.同様の接続ケーブル
- 今回の事象箇所と同様の接続は、サイト内どこのケーブルに何か所あるのか
- 特に使用済核燃料冷却用電源として機能させている通常ケーブル、バックアップ用各種ケーブルにおいて同様の接続は無いのか。今回のような発火事象の可能性は無いのか
3.洞道内の他のケーブルへの影響
- 同じ洞道に敷設している送電用ケーブル他は難燃性であるのか
- 複数のケーブルが全て難燃性である場合、延焼という可能性は無いのか
- 難燃性だからという説明は、大量の煙を発生させ、消防の出動を引き起こした今回の事象を鑑みるとき、安全をも安心をも担保するものではないと考えるが、いかがか
- ケーブル以外に可燃性のものは無いのか
4.通報体制
- 第一報において、行政並びに報道への一斉ファクス通報に問題があったが、一斉ファクスの設定がなされて無かったのか
- 夜間、休日等の火災発生時の緊急参集体制や行政側への状況説明体制はどのようになっていたのか
- 住民に対し迅速に情報を伝えるという観点からすれば、もっとこまめに情報連絡する必要があったのではないか
5.火災発生現場での連携
- 火災発生現場において、市消防と東電現場責任者等との間で正確な情報が共有できなかったことについて、早期に事実関係を明らかにし、対策を市消防と協議すること
- 設楽所長の「今回結果的に当初の火元情報が正しかった」というコメントは、当初地下5メートル洞道内に火災が発生したことを柏崎市消防に伝えた、ということを示唆したのだとするならば、現場到着後、東電フュエル隊に導かれて地下22メートルトンネルに向かい、1時間半火元の検索に努めた当市消防の実態をどのように考えるのか。御社フュエル隊にさえ正確な情報が伝えられていなかった中で、どうして「当初の火元情報が正しかった」等と自己弁護とも解釈出来得る強弁ができるのか
6.今後
- 今回の事実関係及び問題点を明らかにしたうえで、早期に対策を講じるとともに、その対策等について、県、市、村と早期に協議すること
回答書
回答日
2018年11月16日(金曜日)
回答内容
11月1日に当発電所構内のケーブル洞道で発生した火災におきましては柏崎市民の皆さまはじめ多くの方々にご心配おかけしましたことを改めてお詫び申し上げます。
先に市長よりご要請いただきました火災状況や対応に係るご懸念等についてご回答いたします。
1.原因究明
今回の事象を引き起こした原因は何か
高台の荒浜側緊急用高圧電源盤から7号機へ電気を送るケーブルは3本ありますが、そのうち1本のケーブルの接続部が損傷し、さらに通電による損傷部の過熱などにより、隣接しているケーブルも損傷したことから、最終的にケーブルの損傷部同士がショートし、火災に至ったものと推定しています。
現段階では、接続部に何らかの不具合があったものと推定していますが、最初のケーブルが損傷した理由について引き続き調査を進めています。
なぜ、原因特定が遅れているのか
損傷した接続部の現場観察等による確認では原因の特定には至らず、詳細な調査が必要と考えております。
調査の進捗状況としては、損傷部の分解調査のための切出し方法の検討及び類似調査個所の選定が終了し、昨日11月15日より切出し作業を行い、11月19日より分解調査に着手する予定です。
また、類似箇所の安全確認のため、類似箇所の抽出・選定を開始しており、11月19日より点検を行います。
(詳細は次項参照)
(添付資料1参照)
2.同様の接続ケーブル
今回の事象箇所と同様の接続は、サイト内どこのケーブルに何か所あるのか
今回の火災発生箇所と同様の接続構造を持つ、6900V以上の高圧ケーブルの接続部は、発電所構内で合計95箇所あることを確認しました(11月16日時点)。
接続部の使用例
ケーブルは、ケーブルドラムに巻き付けて運送しており、ケーブルドラムの大きさから1本あたりのケーブル長さが決定します。従って、その長さを超えるケーブルを敷設する場合には、複数のケーブルを接続しており、接続部を設けることはケーブル敷設を行うにあたっては通常行っている施工方法です。
特に使用済核燃料冷却用電源として機能させている通常ケーブル、バックアップ用各種ケーブルにおいて同様の接続は無いのか。今回のような発火事象の可能性は無いのか
使用済核燃料冷却用電源として機能させている通常ケーブル、バックアップ用各種ケーブルにおいて同様の接続箇所は、71箇所(11月16日時点)となります。これらの接続箇所(合計95箇所:11月16日時点)については、11月19日より順次点検を行います。
3.洞道内の他のケーブルへの影響
同じ洞道に敷設している送電用ケーブル他は難燃性であるのか
同じ洞道に敷設している送電用ケーブル他は難燃性です。
- 所内通信用ケーブル
- 屋外火災感知設備用ケーブル
- 洞道内の照明設備、排水設備、換気設備、火災感知設備等のケーブル
複数のケーブルが全て難燃性である場合、延焼という可能性は無いのか
難燃性ケーブルの場合は、一度着火しても自己消火する特性を有しており、また周辺の火災からの延焼もしにくい特性を有しています。
また、過電流により保護回路が動作し、遮断器を開放し事故電流が遮断されることで、ケーブル事故箇所の加熱を停止することができます。
そのため、事故電流を検出し、遮断することにより、延焼し火災が広がっていくということはないと考えています。
なお、今回の火災においても、過電流により保護回路が動作、遮断器を開放し、ケーブル事故箇所の加熱を停止した結果、自己消火しています。
難燃性だからという説明は、大量の煙を発生させ、消防の出動を引き起こした今回の事象を鑑みるとき、安全をも安心をも担保するものではないと考えるが、いかがか
今回の火災におきましては、柏崎市民の皆さまはじめ多くの方々にご心配おかけしましたことを改めてお詫び申し上げます。
現状では、ケーブルに難燃性のものを使用することで、火災の広がりを抑えるという対応をしております。
しかし、ケーブルが「難燃性であるから、必ずしも火災が発生しない」というわけではありませんので、火災の発生を未然に防ぐため、今回の火災に対する原因究明と対策を実施していきます。
ケーブル以外に可燃性のものは無いのか
可燃性のものとしては、ケーブルをサポート(トレイや枠等)に固縛するためのロープ等が設置されています。
しかし、それらのものは少量であり、万が一、火災が発生したとしても、延焼に発展し火災規模を広げないものと考えています。
4.通報体制
第一報において、行政並びに報道への一斉ファクス通報に問題があったが、一斉ファクスの設定がなされて無かったのか
行政への通報不手際について
- 概要
- 火災発生(確認)後、新潟県、柏崎市、刈羽村他関係箇所には、直ちに電話連絡およびメール(注釈)にて通報連絡を実施しました。〈柏崎市への電話連絡:午前6時45分、メール:午前6時59分〉
(注釈)メールは、電話連絡を補完(メモがとれない、広く情報共有、周知を促すため)するため、夜間・休日に行います。 - ただし、当番が通報連絡実績を整理していたところ、第一報用紙のファクスが未送信であることを確認しました。
- ファクス未送信が確認された後、直ちにファクスの送信を実施しました。〈ファクス発信:午前7時17分〉
- 火災発生(確認)後、新潟県、柏崎市、刈羽村他関係箇所には、直ちに電話連絡およびメール(注釈)にて通報連絡を実施しました。〈柏崎市への電話連絡:午前6時45分、メール:午前6時59分〉
- 原因
- 当番者が、火災発生時の対応フローの記載事項を見落としたことによって、新潟県、柏崎市、刈羽村及び発電所運転検査官他へのファクスが未送信となりました(本来、ファクス機の宛先ボタンにて3グループにファクス送信すべきところ、2グループの送信となっていました)。
- 火災発生時の対応フローにおいて、火災と判断された後に実施する「第一報ファクス」と「電話」の実施が同一の手順にまとめられており、見落としや見誤りやすい記載となっていました。
- 対策
以下の対策を11月2日までに実施しました。また、当番者の対応について、継続的に訓練を行います。- ファクス送信チェックシートを作成しました。
- 火災発生時の対応フローにおいて、事象確定後に実施する「第一報ファクス」と「電話」の実施をそれぞれ分割した記載に改めました。
報道へのファクス不手際について
-
概要
- 当番者は、火災発生時に第一報ファクスを送信〈午前7時01分〉しましたが、本来送るべき18社のうち2社のみに送信されていました。
- その後、報道機関からの問い合わせ等によりファクス送信ができていないことを確認し、第一報を再送信〈午前8時38分〉しました。
- 調査の結果、当番用ファクス機の宛先ボタンの設定に誤りが確認されました。
- 原因
- 7月にファクス機の宛先データ設定の更新作業を行った際、誤って設定していました。
- 宛先設定後のテスト送信も行っていませんでした。
- 当番者が、ファクスが適切に送信されたこと(通信レポート)を確認していませんでした。
- 対策
以下の対策を11月6日までに実施しました。また、当番者の対応について、継続的に教育、訓練を行います。- 当該ファクス機の登録内容を修正するとともに、報道機関向けへ使用する他のファクス機についても登録内容に誤りがないことを確認しました。
- 11月6日に当該ファクス機から報道機関へテスト送信を行い、問題がないことを確認しました。今後、宛先設定を変更した場合は、テスト送信を実施します。
夜間、休日等の火災発生時の緊急参集体制や行政側への状況説明体制はどのようになっていたのか。
夜間・休日においては当番体制(6名)を敷いています。
火災を含め発電所内でのトラブル等が発生した場合には、当番者にて初動(情報収集・対外説明等)対応を行い、合わせて社内関係者へ緊急メールにて事象発生情報等を発信・共有します。技術系対応関係者(運転、保全、放射線関係部署等)及び対外対応関係者(広報等)は、状況に応じて発電所に参集し、対応にあたります。
自治体側への状況説明については、当番者が初動対応を行い、広報部署等の対外対応関係者が参集後は、その対応を引き継ぎます。
住民に対し迅速に情報を伝えるという観点からすれば、もっとこまめに情報連絡する必要があったのではないか
今回の火災については、火災発生(確認)の第一報以降、火災現場の確認に時間を要したこともあり、火災判定を受けた第二報の発信等にも時間を要しました。今後は、火元に関連する情報や現場の対応状況などの情報を積極的に発信していくよう改善いたします。
- 自治体への情報提供実績
- 第一報:電話=午前6時45分、メール=午前6時59分、ファクス=午前7時17分
情報提供(問合せ対応;立坑について説明):ファクス=9時11分 柏崎市のみ - 第二報:ファクス=午前9時29分、電話=午前9時37分
- 第三報:ファクス=午前0時26分、電話=午前10時35分
- 第一報:電話=午前6時45分、メール=午前6時59分、ファクス=午前7時17分
5.火災発生現場での連携
火災発生現場において、市消防と東電現場責任者等との間で正確な情報が共有できなかったことについて、早期に事実関係を明らかにし、対策を市消防と協議すること
今回の火災対応においては、市消防との火元情報に関わる正確な情報共有ができておらず、早急に改善すべき課題と考えております。
既に11月9日より市消防との協議を開始し、現場対応時の事実関係の整理や情報共有に関わる課題の確認作業等を進めています。
確認された課題については、市消防と協力して改善し、今後の消火活動の迅速化に活かします。
設楽所長の「今回結果的に当初の火元情報が正しかった」というコメントは、当初地下5メートル洞道内に火災が発生したことを柏崎市消防に伝えた、ということを示唆したのだとするならば、現場到着後、東電フュエル隊に導かれて地下22メートルトンネルに向かい、1時間半火元の検索に努めた当市消防の実態をどのように考えるのか。御社フュエル隊にさえ正確な情報が伝えられていなかった中で、どうして「当初の火元情報が正しかった」等と自己弁護とも解釈出来得る強弁ができるのか
「今回結果的に当初の火元情報が正しかった」というコメントは、初期対応において火元に関連する情報を正しく共有し、消火活動に際して有効に活用することができなかったことに対する課題認識に基づくものです。
課題については、市消防と協力して改善し、今後の消火活動の迅速化に活かします。
6.今後
今回の事実関係及び問題点を明らかにしたうえで、早期に対策を講じるとともに、その対策等について、県、市、村と早期に協議すること
今回の火災の原因を早期に究明し、再発防止対策や水平展開を確実に行います。また、発電所対応における社内対応者と市消防との現場対応及び社外への情報発信の不備・不手際について、早期に検証を行い、協議、改善を行います。
以上
回答書全文・添付資料は以下のファイルをご覧ください。
この記事に関するお問い合わせ先
危機管理部 防災・原子力課 原子力安全係
〒945-8511
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電話:0257-21-2323/ファクス:0257-21-5980
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更新日:2020年01月31日