令和6(2024)年度の市長随想
このページは、「広報かしわざき」に掲載した記事をもとに作成しています。
(注意)2024年12月号の市長随想は、休載します。
妻と夫(広報かしわざき2024年11月号)
皆さんはご自分、人様の配偶者「妻」や「夫」のことを何と呼んでいらっしゃるでしょうか ?と男女共同参画推進市民会議であいさつした。
「奥さん」
つつましく、控えてというイメージである。
人様に対しては私も使ってしまうが、現代風じゃないなあとも感じる。
ウチは奥でも前でもなく「中さん」ぐらいだろう。
「夫人」
私の場合、最近「○○さんのご夫人は…」というように使う。
しかし、考えてみれば「夫の人」である。
間違いないようにも思われるが「夫のもの」と所有を表現しているようで気にかかってきた。
「嫁」
家の女というのも?
「妻」
最近、自分の配偶者を人様に紹介するときに使っている。
「女房」
これも使ってきたのだが、少し野暮ったく感じられ、この頃は使っていない。
「家内」
これもウチの実態には即していない。
バドミントンやマラソンに出かけている。
「家外」である。
「愚妻」
間違っても使えない。
「賢妻」という言葉があるかどうか分からないが、そこまでは持ち上げられない。
「かみさん」
昔、ドラマ「刑事コロンボ」で流行ったが「上様」が語源である。
確かに今私の立場、状況ではこのように呼んで、奉ることが平和をもたらすのかもしれない。
問題は人様の女性・男性配偶者をどう呼ぶかである。
「奥さん」「夫人」「ご主人」それぞれ課題があるように思える。
「妻さん」「夫さん」では日本語として違和感がある。
「配偶者」では法律判断を下しているみたいだし「パートナー」は「ええい、日本語を使え!」と自分を責めたくなるし。
難しい。
踊る双体道祖神(谷根)
ちなみに「私」は「旦那」と呼ばれているようである。
もともとはインドのサンスクリット語「無償の施しをする人」という神聖な意味である。ウンウン。
しかし、もちろん「若旦那」ではない。「主人」でもない。
おっと、結びの頃である。
考えることは多い。
ハイシャの論理(広報かしわざき2024年10月号)
虫の音が聞こえる。コオロギやクツワムシ、鈴虫。
合唱というほどのハーモニーはない。
だが、耳を澄ます。
いつも思うのだが、やはり少し悲しげである。
コナラの木はたくましい。
夏前に剪定し、真夏に新芽を出した。
さすがに元気がなかったが、このところの雨で色が良くなってきた。
あとひと月もすれば落葉の季節なのに、みな短い命を育み、その責任を果たす。
その昔「市会議員の櫻井です」とごあいさつしたところ「歯医者さん? 知らないわ」と言われたことがある。
今や歯科医の皆さんには、児童生徒の学校健診、成人の歯周病検診など大変お世話になっている。
「歯の健康は体の健康」とご指導を賜っている。
本当にありがとうございます。
さて、私自身も何度か「敗者」を経験している。
たぶん多くの方がその経験をしていらっしゃると思うのだが、自分自身よりも身近な人間、周りの方々が悲しむ姿を見ることが辛い。身に染みている。
負けてしまえば、どうしようもない。
確かにそうである。
ただ、勝っても負けても失うもののほうが多いように感じる時もある。
世の中は「光る君」モードだが、私はずうっと「平家物語」派である。
ご存じの通り「源氏物語」は源頼朝の話ではなく、平安の世、架空の「光源氏」の話である。
片や中世、平清盛はじめ3代の栄華と破滅の物語である。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」「盛者必衰の理」を説き、日本人の琴線に触れる。
負けの文学である。
清盛は初めて武士による政権を樹立、外国との交易に努め、財政基盤を強化、通貨経済の発展にも寄与したといわれている。
先日、久しぶりに北条毛利の城山に登ってきた。
「平家物語」から300年ほど下った1500年代、毛利氏が勝者であったのか敗者であったのかは不勉強故、承知していない。
いずれにせよ遠い後の世の産附の勝利を報告してきた。
ありがとうございました(広報かしわざき2024年9月号)
最強のダークホース、産附野球部の活躍を確信する!
新潟産業大学附属高校野球部の皆さん、柏崎勢初の夏の甲子園、柏崎の悲願達成、本当におめでとうございます。
そして、ありがとうございました。
皆さんは柏崎の誇り、子どもたちのあこがれとなりました。
ノーシードからの優勝、ダークホースと言われました。
まさにその隠された才能を、能力を発揮していただきました。
仲間を信じ、監督を信じ、そして自らを信じ可能性を花開かせたのです。
甲子園でも「信じる力」をいかんなく発揮してください。
皆さんの技術はまだまだ向上します。
皆さんの心ももっと強くなります。
私たち柏崎市民も全力で応援します。
『産附野球部、「勝ってこい!」』
と、甲子園の出場が決まった際、求められ新聞広告に書きました。
選手本人たちが自ら「ダークホース」と名乗り、ジャイアントキリング(大番狂わせ)を狙っていると聞いたからです。
まさに選手、コーチ、監督はそれを実現させました。
私たち柏崎市民は夏の甲子園、柏崎勢初出場、新潟県勢として7年ぶりの勝利に心動かされました。
市内イタリアン名店のオーナーからは「涙が出た。戻ってきたらピザとパスタをごちそうする」とのお話までいただきました。
産附同窓会、後援会、野球部OB会の皆さんの募金活動の際、市民の皆さんが口々にユニフォーム袖の「柏崎」の文字に「感動した」と話していらっしゃいました。
甲子園用に付けていただいたと聞いております。
パリオリンピックでも、水球、セーリング、選手関係者が重ねての活躍をいただきました。
いずれも大きな可能性、誇りを示していただきました。
本当にありがとうございました。
夏の一日、55年前(広報かしわざき2024年8月号)
♪新しい朝が来た 希望の朝だ♪ と「ラジオ体操の歌」は始まる。
ああ、そうだったね、と思い出す人も多いだろう。
子どもの頃、夏休みが始まるとひもの付いたラジオ体操カードを首にかけ、ランニングシャツと半ズボンで家を出た。
近くのお寺の境内で「それ、イチ、ニ、サン」と歌い、第一、第二と体操をして、裏浜(今のみなとまち海浜公園あたり)までマラソン(その頃ジョギングという言葉はなかった)。
戻ってくるとカードにハンコがもらえた。
いったん家に帰り、朝ごはん、すぐにタモを持ち、そのままセミ捕りにいった。
毎日繰り返す。
地上でのはかない人生、いやセミ生?を知らずいったい何匹のセミを捕ったのだろう。
アブラゼミの幼虫が地上に出てきて、透き通るような白と葉脈のようなエメラルドグリーンを携えた羽を伸ばそうとしているときの美しさは例えようもない。
夏も終わりに近づくとヒグラシの「カナカナカナ」という声は物悲しい。
中学生ともなると部活動、陸上競技場。走りに走った。
石炭ガラがまかれたトラックとオールウェザーラバーで新装されたフィールドの一部。
真夏の競技場は独特の匂いがした。
スタンドでの休憩時、浜風が心地良かった。
優秀な選手にはなれなかったが、今の私の基礎を作ってもらった。
休日には自転車にまたがり、番神の海へ通った。
先般「夏休みをやめてもらいたい、短くしてもらいたい」という親が一定数いる、との調査発表があった。
昼食など生活費がかかる、というのが理由の一つだという。
ドラマではないが、はて? と考えるところである。
今の子どもたちはどんな夏休みを送っているのだろう。
楽しい思い出をたくさん作ってもらいたいと願う。
私たちはそのお手伝いをしたい。
塩と砂糖とホトトギス(広報かしわざき2024年7月号)
ウチの裏にある小さな森(妻は大きなやぶと呼んでいる)にはコナラの木が2本あり、多くの二酸化炭素を回収し、酸素を提供している。
いろいろな鳥もやってくる。
「ねえ、今日は網戸にメジロが止まったよ。ウグイスが一日ずうっと鳴いていたわ。お嫁さんまだ見つからないのかしら?」
ウグイスの「ホーホケキョ」はホーは吸う息、ホケキョは吐く息、と聞いている。
私の鳴き声は最近、吐く息「はーあ」が多く、30年ほど前に見つけたお嫁さん、妻には「他の鳴き声は無いの!」と言われている。
確かに「はーあ」ではお嫁さんどころか、何も導かない。
「よしっ!」と気持ちを入れ替えることとした。
効果てきめん? ハチがやってきた。
コナラの葉から分泌する甘い樹液を求めてなのだろう。
ハチは刺激しなければ人を襲ってくることはない。
そのハチはコナラと共に植えてある我が家の梅の木、新潟特産「藤五郎」の受粉を助けてくれた。
今年は豊作だ。梅干しと梅酒になる。
梅は中国原産。1500年ほど前に薬である「烏梅(うばい)」を遣唐使が持ち帰ったことが始まりだと聞いている。
字のごとく未熟な梅を燻製(くんせい)にしてカラスのように黒くしたものだという。
解毒や傷の手当てなどに用いていたらしい。
ご存じの通り梅干しには塩を使い、梅酒には氷砂糖を使う。
それぞれ、梅酢、芳香、エキスを導く。
私は甘いものも塩辛いものも好きなのだが、私からは何が抽出されているのだろうか。
随分燻されて黒くなっているが、さすがに薬になっているとは自分でも思えない。
いい「塩梅(あんばい)」を知らぬ私からは毒も出ているのかもしれぬが、少しはお役に立つものも出ていることを願う。
夏の鳥は古来ホトトギスと決まっている。
時を知らせる鳥、時鳥とも書く。
鳴き声は「特許許可局」などと表現される。
いずれにせよ我が森にはまだ許可も下りず、時鳥も来ていない。
「よしっ!」とまた気合を入れよう。
対価17円(広報かしわざき2024年6月号)
えんま市がやってくる。
「さあさあ、皆さん、○○の工場が火事出しちゃって、丸こげ!
このペンの山! 給料替わりだって!
さすが、18金! 水で洗って、ほらこの通り!
あんちゃん、どうだい? 万年筆!」
露店のおじさんは翌年も出ていた。
「○○の工場って毎年火事が出るんだあ」と小学生だった私はそのまま信じていた。
50年も前の話である。100円。
東京出張が重なるが、少しずつ成果が。
北海道など、洋上風力発電からの電力200万キロワット(原発2基分)海底直流送電、柏崎揚陸、首都圏へ送電・地元利用構想は以前書いた。
このほど柏崎地内において海域実地調査が始まった。
もちろん乗り越えるべき課題も多いが、総事業費は最大1.8兆円。
柏崎地内における事業費は1千億円超が期待される。
その東京出張も調整がかなわず、3時間ほど空く時がある。
国会図書館に行った。40年ぶり。
入館やさまざまなサービスを受けるにはIDカードを作らなければならない。無料。
せっかく入ったのだから調べ物を、と「綾子舞」をキーワードに一番古い文献を検索してみた。
出てきたものが村山善治編『越之海』(三條町、猶興社)。
コピーをしてもらった。
内容は上杉房能(ふさよし)が松之山郷天水越(まつのやまごう あまみずこし)にて自刃、夫人綾子が上条に逃れる場面において、編者が「古い文献では雨溝(あまみぞ)という地で自刃したことになっているが、上条女谷の綾子舞の詞に『てみづの山ぞうらめしき』とあるので、天水をあまみづと読み誤ったのではないか」と注を付けている。
500年前の史実を、1903年、今から121年前の刊行物が解説。
カウンターで支払い、17円!
今までで一番価値ある17円であった。
えんま市の好天を心より願う。
おさい銭、思い切って 500円。
合唱(広報かしわざき2024年5月号)
それぞれの月には四季を表す枕ことばが付くこともあろうが「風薫る五月」ほど私たち日本人の感覚にピッタリとくるものはないのではないか。
春、初夏の山中にも芳香が放たれている。酸っぱいような香りである。
ツクシやショウジョウバカマなど比較的群落を作る草花由来かと思っていた。
専門家によれば落ち葉が太陽で温められ、発酵するときの香りかもしれない、という。
針葉樹、落葉樹、下草、その地域の植生が複雑に絡み合い、発した揮発性有機化合物、ということになるらしいのだ。
少し情緒的に言えば調和したものであろうといわれている。
文末の写真は、どちらかというと日差しが苦手なフッキソウと日なたを好むタチツボスミレが同居している様子である。
調和、ハーモニー。古代ギリシア語、ラテン語harmonia を語源とすると言われている。
満天の星空を見上げたギリシア人が、多くの星がぶつからずに存在している様子を表現したものだともいう。
さて、先日、鯖石小学校と高柳小学校の統合式が開かれた。
結びは校歌斉唱。校歌は合唱曲であった。
パートに分かれ、合唱ができるんだ! 私は驚き、そして感動した。
さまざまな曲折を経て、統合に至り、両校の子どもたちが声を合わせ、心を合わせ合唱している。
私は安堵した。かわいらしい、そして美しいハーモニーであった。
児童代表のあいさつも立派で「僕は先頭に立って大きな声であいさつをしたいと思います」と両校出身者が仲良く進むことの決意を述べた。
私は「黒姫から流れ出た水、八石から流れ出た水、合わせ鯖石の水となります」と話した。
まさに新たなハーモニーが生まれ、子どもたちの可能性がより大きなものとなることを確信した。
会場には地域の皆さまの温かな気持ちがあふれ、外はうららかな日差しが降り注いでいた。
ライバルあれこれ(広報かしわざき2024年4月号)
春はあけぼの
やうやう白くなりゆく山ぎは
すこしあかりて
紫だちたる
雲の細くたなびきたる
『枕草子』の冒頭部分である。
作者は清少納言。
平安時代、今から約千年前の作品。
昔、覚えさせられた、という人も多いだろう。
何度口ずさんでも美しい春の描写である。
この当時、女性の本名は明らかにされず、清少納言(せい しょうなごん)は通称である。
「清」は生まれた清原姓を意味し「少納言」という官職に就いている男性、の関係者という感じになる。
今から見れば女性を官職にひも付けして呼ぶなど随分理不尽な話である。
ライバルは紫式部。NHK大河ドラマ「光る君へ」主人公のモデルとされる女性である。
作品は『源氏物語』。
ほぼ同時代に生きた才女二人で、元祖ライバルと言っても良いかもしれない。
残念ながらあまり仲が良くなかったというか、お互いにかなり厳しい指摘が作品に見える。
それぞれの作品の中には花も出てくる。
花といえば、奈良時代までは中国伝来の梅、平安時代以降は日本の山に自生の桜、と決まっている。
微妙にライバル。
また、国語の先生みたいになってしまって恐縮である。
紅白のカタクリ
「この桜吹雪に見覚えがねえとは言わせねえぜ」と言うのはご存じ?遠山の金さんだが、「花吹雪」を世界一美しい言葉、と讃えたのは哲学者の谷川徹三氏である。
もちろん二人はライバルではなく、時代、虚実を超えた桜花に魅せられし同好の士?であろうか。
「ひとそれぞれ好みはあるけど どれもみんなきれいだね」とSMAPも歌っていた。
タンポポの黄、オオイヌノフグリの青、オウレン、トキワイカリソウの白、ショウジョウバカマ、カタクリ、花桃のピンク、タチツボスミレの薄紫。
みんな仲良く咲いている。
山紫水明。
皆さん、柏崎の山野に花を見に出かけましょう。
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更新日:2024年12月05日